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スポーツと歯の重要性について

私たちは、お口を開けたままボールを蹴ったり重たい物を持ち上げたりすることはほとんどありません。
歯と歯をかみ合わせて、ぐっと力を入れないと出来ないのです。

もともと生きものとして備わった歯の機能には、外敵と戦い自分の命を守る、発音、そしてもちろん栄養をとる為の食べる・噛む・飲み込む能力があります。だれも他に対して噛みつく人は滅多にいないと思いますが、いざ“頑張る”という時、“歯を食いしばる”とか云いますね。
スポーツなどで力を入れる時、歯と歯を強くかみ合わせるのは生き物として生きていくために備わった外敵と戦う機能の名残かもしれません。

さて、歯は口の中に見えている上の部分(歯冠)と骨に埋まっている根っこの部分(歯根)で出来ています。
歯冠は根っこの部分に続いていて歯根は、その名の通り骨という大地に植えられています。
そして、骨と歯根の間には歯根膜と言う薄い膜があり、噛む時の大きな力を和らげる役目をしています。
歯の周りの歯茎や骨といっしょに歯を支えている大事な組織(歯周支持組織)です。

もし、この歯周支持組織が病気になったらどうなるでしょう?
歯そのものは良くても歯の周りの歯茎、骨、歯根膜が病気になると歯がぐらぐらしたり、口の中がねばねばしたり、嫌な匂いがして硬いものがかみにくくなってきます。さらには、歯茎は腫れて痛みはさらに激しくなり歯の周りの骨が溶けてくるのです。
これを歯周病といいます。
ほとんどのタイプの歯周病は、静かに長い時間をかけて進行します。
悪いことに初期には、ほとんど自覚症状がありません。

健康な歯を家にたとえてみましょう。
歯周病になるとこの家がぬかるみに建っているようなもので、土がしっかり家を支えていないからすこしの風や雨、まして嵐が来たら根こそぎ倒れてしまうでしょう。
歯も同じです。
病気になってしまった組織に支えられている歯では、思いきりボールを蹴ったりくいしばったりすることが出来ません。

お口の健康を守り病気を防ぐのは、体全体のためにとても大切です。
スポーツ選手にとって調和のとれた動きは、良い結果のために不可欠でしょう。
また、思わぬ怪我を防ぐためにも、日ごろからお口の健康に気をつけて下さい。
私たちは、人生の中で何度も歯をくいしばって頑張らなきゃならないこともあるでしょう。
なにせ歯は、戦う道具の一つですからね!


■橘みずき/歯学博士