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茶道とスポーツ~伝統の継承を積み重ねから
茶道 では一つ一つの作法に意味があり確固としたルールがあります。
例えばおじぎの仕方でも何回も何回も繰り返し練習し、そのお流儀にかなった美しい動きを学びます。
決まった型(かたち)を長年のお稽古によって身につけ,自然と美しい動きをすることが修行の一つです。
それはお客様のことを思い、もてなす為にすることなのです。
お茶を点ててお客様をもてなす為に、という心は相手を思いやる心の表れです。
さて、この美しい所作を習得し磨き上げる為にはどうしたら良いのでしょうか?
それはお稽古をすることです。お稽古だけがその目的に近づくことの出来るたった一つの方法です。
スポーツもまったく同じでしょう。
目的の為にそのスポーツに適した方法で身体を鍛え、練習し、そしてどうしたらより良い成績を得られるか?などを考えることは練習を通していろいろなことを試した上で少しずつ分かってくることなのでしょう。
練習なくして向上はありえませんし、考えることなくして向上はあり得ません。
これは茶道やスポーツに限らず、どの芸術にもそしてどの職業にも共通していることと云えます。
言い換えれば漫然と同じ動作を繰り返すことを練習というのではなく、常に明日の向上の為に考える、ということが大切なのです。練習をしていないときもです。
ご自分の職業でも質的向上を目指して、修練を重ね、目標に到達する為にはどうしたらより効果的か?どうしたらより良い結果になるか? を考えることで成長は約束されるのでしょう。
茶道の場合はお稽古(練習)を通していろいろ試し、試行錯誤を重ねてやっと美しい形を習得できるのです。ひとり一人身体の形もボリュームも違います。まして心もそれぞれです。おもてなしをする時に一つ一つの所作を考えながらするのではなく、心から自然とその動作が出来るようになるまでお稽古をするのです。
美しいものをめざすということは精神を磨き、柔軟な心を持ってして初めて到達できるとても難しいことなのです。
ところでスポーツの過程では 美しい瞬間がたくさんありますね。
選手達のたゆまない練習によって培われたかがやく所作に人は感動します。その努力に心から賞賛をします。勝っても負けても皆が勝者です。
茶道のお稽古を通して身に付いた美しい身体の動きをさらなる修練で磨き上げ続ける。
それが茶道の基本であり伝統です。時代と共に美しさの価値観や 動きが変わったとしても基本になるおもてなしの心は変わりません。それを表現するパフォーマンスアートなのです。
そしてその心こそ、私たちが守り大切に引き継いでいく伝統といえるでしょう。
然清歌(茶道家)